コーア・クリント
現代デンマークデザインの創始者
デニッシュモダンの父
建築家であり教授でもあったコーア・クリントは、現代デンマークデザインの先駆者であり、当時最も影響力のあったデザイナーの一人に数えられています。
コーア・クリント (1888-1954) は、現代デンマークデザインの創始者です。クリントは人間のプロポーションを考慮し機能を重視するという、新たなデザイン思考を開拓し、それに基づいてデザイン重視の名品を次々に創造し、やがて「デンマークモダン」の時代に開花する新世代のデンマーク人デザイナーらに道を開きました。
形状と素材のバランスが絶妙なクリントのデザインは、家具とそれが置かれた環境とのユニークな関係を体現しています。クリントは、流行に左右されないシンプルなデザイン、ゆるぎないクラフトマンシップの信奉で知られ、その家具は今日でも高い人気を誇っています。
原則から決して外れることなくデザインを創り出す、という優れた才能を備えていたクリントは、既存の家具の寸法を測ってそのデザインを簡素化し、人の体に合った家具づくりに焦点を当てました。クリントは、デザインの過程で余分な要素を削ぎ落し、家具の本質のみを残そうとしました。
コーア・クリントはコペンハーゲンで生まれ育ちました。コペンハーゲンのグラントヴィッグ教会などを設計した建築家ペダー・ヴィルヘルム・ジェンセン=クリントの息子として、クリントは幼少時から「機能美」という概念に触れており、そこからデザイナーとして、また後には教育者として、数学に基づいたデザイン手法を採用するようになりました。
1924年、クリントはデンマーク王立美術アカデミーに家具デザイン学部を共同で設立し、翌年に准教授となり、その後教授に就任しています。教師兼デザイナーとして、クリントは次世代のデザイナーや建築家を育て、インスピレーションを与えました。そこには、ハンス J. ウェグナー、モーエンス・コッホ、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルムなど、今日では世界的に有名となったデザイナーも少なからず含まれます。
デンマーク王立美術アカデミーの家具デザイン学部におけるクリントは、プロポーションの研究で知られるようになり、日常よく使われる物を対象に、すべてを正確かつ詳細に測定し、その結果を機能上の要件と比較するという画期的な研究を 学生らと共に行いました。
今日クリントは、家具デザインの分野における改革者であると考えられています。スタイルよりも機能性や建築原理の実験を重視した史上初のデザイナーおよび教育者の一人として、スタイルを重視する当時のデザイン教育を打破するきっかけを作りました。
デザインと環境の関係を理解していたクリントの主張は、空間において自分のデザインが決して圧倒的な存在感を持ってはならない、形状と機能は空間全体を考慮した上で統一すべきだ、というものでした。また、どの作品においても明確で論理的なデザインと独自のスタイルを追求し、上質な素材と優れたクラフトマンシップを駆使しました。
1928年にはエッカーズバーグ勲章、1954年にはC.F.ハンセン勲章など、数々の賞を受賞したほか、1949年には、ロンドンで「王室工業デザイナー」の名誉称号を受けました。
「現代における家具のデザインは実用的な必要性に基づいていなければならないということを、人々はほんの少しずつわかってきている。」
コーア・クリント。1930年の業界誌『Arkitekten』より。
Carl Hansen & Sønは、家具づくりの技へのオマージュとして、コーア・クリントの2つの代表的な傑作、EnglishチェアとSphericalベッドを復刻いたします。当社のコレクションの中でも最も手間暇のかかる、複雑な構造の家具です。
Collection
Exclusive Kaare Klint Collection
コーア・クリントの家具は、現代デンマークデザインの歴史の中で特別な位置を占めています。「レッドチェア」シリーズ、ソファ、ファーボーチェアなど、クリントの代表的な作品は世界中に「デンマークモダン」を広める基礎を築き、製作から数十年経った現在でも、高い人気を誇ります。
当社のデザイナー
Hans J. Wegner
デンマークの家具デザイナー、ハンス J. ウェグナー (1914-2007) は、家具づくりにおける精度の高さ、クラフトマンシップに対する優れた洞察力、デザインに対する妥協のない姿勢で知られており、史上最もクリエイティブで革新的、そして多作なデザイナーの一人に数えられています。
Ole Wanscher
オーレ・ヴァンシャーは、機能性溢れる、優雅なデザインでデニッシュモダンの流れに大きな足跡を残しています。クリントが教鞭をとる王立芸術アカデミー家具科に在籍し、クリントの下で２年間仕事をした後、1928年自身のデザイン事務所を設立。家具デザイナーに専念していきました。クリントの後継者として王立芸術アカデミー家具科の教授にも就任。デンマークデザイン界をデザイナーとして、教育者として牽引してきました。
ポール・ケアホルム
デンマーク人のポール・ケアホルム (1929-1980) は、機能主義的で妥協のないデザイン、画期的な素材の使用、デンマークの伝統的なクラフトマンシップに根差しながら国際的でもあるスタイルで知られる、影響力のあるデザイナーでした。
Rikke Frost
リッケ・フロスト (1973-) は、素材に関する深い知識と、さまざまな伝統工芸を組み合わせるデザイン手法で知られています。その姿勢は、伝統的なデザインと現代的なデザインの原理と素材が収斂した、有機的なスタイルの家具や照明などの作品にはっきりと投影されています。
Fabricius & Kastholm
デンマークのデザイナー、プレーベン・ファブリシャス (1931–1984) とヨルゲン・カストホルム (1931–2007) のデザインは、「機能性」と「ミニマリズム」がキーワードです。共同でデザイン活動を行った二人は、世界的に有名な家具や照明のデザインを生み出しました。
Frits Henningsen
妥協をしない、完璧主義を貫いたデザイナーとして知られたフリッツ・へニングセン。常に家具の品質と職人のクラフトマンシップを最優先に製品を開発し、自分でデザインから製作までこなしていました。
Strand & Hvass
デザイナーデュオ、ストランド＋ヴァスは、デニッシュモダンの黄金期を築いた巨匠たちの、知識と才能を継承する新世代のデザイナー。デニッシュモダンの伝統を取り入れながらも、そこに斬新な表現と機能を追求したExtend Tableは彼らの代表作です。
EOOS
マーティン・ベルグマン (1963～)、ゲルノット・ボーマン (1968～)、ハラルド・グリュンドル (1967～) の3人が設立したデザインスタジオEOOSは、デザインへの詩的なアプローチで高い評価を得ています。
Thomas Bo Kastholm
多様な素材を融合することで、明確な機能と美しさを備えた製品を生み出す、トーマス・ボー・カストホルム。デニッシュモダンの伝統を継承するTK8デイベッドは、そうしたカストホルムのオリジナルコンセプトが形になったものです。
Mogens Lassen
ル・コルビュジエに影響を受け、数々の業績を残す建築家モーエンス・ラッセン。デンマークにおける機能主義の先駆者として、素材に関わらず自身のアイデアを形にする見事な才能を発揮しています。
Arne Jacobsen
デンマーク屈指の建築家の一人に数えられるアルネ・ヤコブセン (1902-1971) は、国際的にもモダニズムの代名詞であり、その厳格で表現力豊かなスタイルは、彼の生み出した建築とデザイン作品全体の特徴となりました。
Børge Mogensen
ボーエ・モーエンセン（1914-1972）は、使用する人びとを核とする、その独特のデザインアプローチで耐久性に優れた家具を世に送り出してきました。第二次大戦後、デニッシュモダンを牽引した大きな影響力を残すデザイナーの一人です。
Bodil Kjær
デンマークのデザイナー、ボーディル・ケアは教授、デザイナーとして世界中を飛び回り、デザインと建築の関係についての自身の知識を広め、デニッシュモダンの基本コンセプトの普及に大きく貢献してきました。
Thorup & Bonderup
最も多作なポストモダンデザイナーに数えられるクラウス・ボンデルップ (1943-2022) とトーステン・ソーラップ (1944-)は、建築や国際的なデザインプロジェクトから工業デザインまで、あらゆるものに足跡を残してきました。
Nanna Ditzel & Jørgen Ditzel
空間の探求と技術の限界に挑戦することでデザイン界に名を馳せたデンマーク人デザイナー、ナナ・ディッツェル。その気品ある人格でもよく知られていました。
カール・ハンセン＆サンの製品を選ぶことは、単に家具を買うことと同義ではありません。それは、美しく磨き抜かれたクラフトマンシップの長く誇り高い伝統の一部になることなのです。当社はハンス J. ウェグナーのデザインを世界で最も多く製作する家具メーカーであるとともに、アルネ・ヤコブセン、ボーエ・モーエンセン、オーレ・ヴァンシャー、コーア・クリント、ポール・ケアホルム、ボディル・ケア、安藤忠雄など、名だたる家具デザインの巨匠たちの作品も製作しています。100年以上にわたる豊かな歴史を誇るカール・ハンセン＆サンは、デンマークデザインを代表する家具を世界中で販売しています。
* インドア家具：5年間保証。アウトドア家具：2年間保証
