ここ数年、コペンハーゲンにデザイナーホテルを続々と開業している、Brøchner Hotels社。小規模なホテルグループですが、100年を超える古い建物をホテルに改装し、ビジネスを展開しています。本来の魅力を維持し、その個性を活かしながら建物を魅力溢れる空間に再生。温かい雰囲気と魅力的なインテリア、そして高い接客レベルと相まって、観光客ばかりでなく、地元の人にも高く評価されるホテルグループです。

コペンハーゲンの市庁舎からわずかの距離に位置するホテル・デンマーク。街が誇る様々な美術館にも歩いていける美術館地区に、同社の最新ホテルとして2017年に開業しました。 

客室数は89室。それぞれ1792年、1969年に建立された二つの建物で構成されています。ホテルの改装に伴い外壁に施された森林を思わせる深緑のタイル。軒先のカフェや植え込みと相まって人々を惹きつける、活気あふれる外観を創り上げています。
Brøchner Hotels社は、従来のホテルと違い、宿泊客のチェックインをロビーのバーで行うシステムを取っています。フォーマルな堅苦しさを和らげる、同社ならではの細かな配慮です。バーは、長方形のくつろいだスペース。床は白の斑点が施された黒いタイル張りとなっています。空間を彩るのは、スラット加工を施した壁面パネル、赤く塗装したオーク材の造り付けの書棚、そして真鍮製のカウンター。いずれも空間に温もりを与えるデザインです。

そして、ゲストがくつろぐ椅子は、1933年にデザインされた、クリントのKK48650 アディションソファ。発表された当時の彷彿させるネイビーブルーの皮革が、味わいのある洗練された雰囲気を空間に醸し出しています。　また、ハンス J. ウェグナーが1950年にデザインした椅子 CH23が、長方形のテーブルと伴に使用され、心地よいワーキングスペースを創り出しています。 

2階は、テーブル、壁、天井に黒、そしてカーペットにグレーと、全体にモノトーンを用いたコンファレンスルーム。さりげない優雅さが漂う空間です。コンフェレンスチェアにはブラックのパウダー塗装のフレーム、黒の革張りを座面に用いたCH88。スモークドオーク材の背もたれが、唯一この空間で色を放つ存在となっています。  内装デザインにあたり、デザインチームが参考にしたのは、近隣の歴史的な建造物の一つであるトーヴァルセン美術館。彫刻家Bertel Thorvaldsenの作品を所蔵するために、1848年に完成した、建築家Gotlieb Bindesbølのl設計による美術館です。群青色、ポンペイレッド、バーントシェンナ、シュゼーリンググリーンと美術館に使用されている色を、ホテルの廊下、天井、内壁そしてこのホテル用に特別にデザインされたラグに配色。ホテル内でも見逃がされてしまいそうな場所を美しく印象的な空間にしています。